講和問題と日本の態度【日本經營計画Ⅰ(解題)】

こんにちは。
戦略思想研究所 中森です。

『日本經營計画』

Ⅰ 講和問題と日本の態度
 1.講和問題に対する日本の態度
 2.日本の國連的定位

を公開します。

サンフランシスコ平和条約の調印は1951年9月8日ですから、その10ヶ月前、仲小路彰が”講和問題と日本の態度”を地球文化研究所として、具体策を提案していたことになります。

当時、地球文化研究所は、貿易庁の迎賓館「光輪閣」と密接な関係にある政策集団として知られており、その代表的人物として、文明思想家の仲小路彰、海軍司令部作戦部長だった富岡定俊が挙げられています。

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出典:https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=34983709

富岡定俊は、1945年9月2日、東京湾上の戦艦ミズーリの甲板上における降伏文書調印式に日本全権随員として参列しており、戦前には、「総力戦研究所ニ海軍トシテ推薦ヲ適当トスル学者」として、仲小路彰と小島威彦を推挙した人物でもあります。

その寸評は次のとおり。

「仲小路彰・哲学史学(思想戦)戦争文化研究所ノ頭脳的中心、天才的頭脳ヲ有ス」
「小島威彦・国民精神文化研究所員(思想戦)高嶋辰彦大佐ト共ニ戦争文化研究所ニテ総力戦研究、現在ハ海大研究部ノ協力者、末次大将系」

戦争文化研究所の基礎基金は、石原莞爾の指示で支払われた資金が元になっていることは、以下の記事でお伝えしたとおり。

小島威彦の義兄には左近司政三海軍中将があり、左近司政三を介して末次信正海軍大将とつがることになります。

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出典:https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=128143113

光輪閣の総支配人でありキャンティのオーナーでもあった川添紫郎は、小島威彦のいとこであり、伏見宮博恭王を中核とする艦隊派の雄たる末次信正は、仲小路彰が命名した「スメラ学塾」の塾頭になります。

書き始めるとキリがありませんが、要するに『日本經營計画』がいかなる筋に配布されていたか、その素性を見透かすことが肝要です。

ヘロドトスの言とされる「陸は隔てる、海は繋ぐ」を兵法に転ずれば「陸は緩衝地帯、海はワンワールド(=グローバル)」です。

さらに大事なことは、戦争文化研究所は「世界興廃大戦史(全百巻)」を著していることであり、すべて読まずとも、仲小路彰が世界中の戦史を熟知していたことは想像に難くないと思います。

愛国とは何か?
戦争とは何か?
平和とは何か?

一つのモデル、一つのイデオロギーといったもので進んでいく時代の終わりを見透かし、矛盾しているものを抱え込み、葛藤しながらも、中心に強い力や唯一の正解を置かず、空白として残し、未来を創造し、”皇道”を世界に敷くこと。

これが、仲小路彰の”グローバリズム思想=地球論”を理解するための肝となろうかと思います。

愛国とは何か?
戦争とは何か?

だけに絞れば、ホーマー・リーが最も的確に論じていますので、『日米必戦論(原名 無知の勇気)』ホーマー・リー著、望月小太郎訳より引用します。

同著の復刻版は、1982年4月発行であり、現在手に入りづらくなっておりますが、矢次一夫が”あとがき”で述べているように、「大いに学ぶべき良書」です。

やや長文となりますが、引用を始めます。

人類間に普及せる数種の道徳中に在りて、特に愛國心なるものは世間一般に具体的に発展せられ、而して其應用の途も亦萬様なり、従て種々なる奸策に利用せらるゝことあり、故に愛國心なるものは漫りに、国民の崇拝物となれる時は、却て其眞價を滅失し、愛國心なる上位の下に幾多の罪惡は包藏せられ、國民は爲めに欺罔せらるゝに至る。
『愛國心てふ美名の下に、奸譎の徒は最後の避處を見出す』と云へる古語は最も雋味あるを覺ゆ。
此の奸譎の徒の避處たる以外に愛國心なるものは之を三種に區別することを得べし。其二種は虛僞なるものにして、極めて普通に行はれ、其一種は眞實なるものにして、稀に見る所なり。而して其二種なる虛僞的愛國心の中最も普通に世に行はれ、最も多く誤られたるものは、他の國民に對して頑迷固陋の念を懷き、徒に軽視侮蔑の態度を執り、殊に或るものに對しては殆ど仇敵の觀を以てするが如きもの之なり。
詳言すれば自國の大功業も將た其の大罪惡も共に之れを誇稱し却て自國民の缺點を看過し一切の失態を愛國心なる偶像の下に隠蔽するが如きは其好例なり。
愛國心にして徒に他國に對する侮蔑若しくは僻見に外ならずとせば、眞正の愛國心なるものは遂に衰亡せんのみ。又眞正の愛國心を鼓舞せんが爲には必ずしも敵愾心を惹起せしむるの要なし。
個人若しくは國民の懷ける愛國心の眞價を知るの時機は、戦時にあらずして却て平和の時機にあり。平時に於て國家の福利に冷淡なるもの、安ぞ能く戦時に於て國家の用を爲すを得ん。常に国庫の信用を盗み黄金を奪ひ悎として恥づるを知らざるの徒が、戦時において稱讃すべき愛國心を発揮する如きは殆ど想像すべからざる所なり。
要するに是等は稱して消極的賣國奴と謂ふべきのみ、純粹なる愛國心は政治的徳操にして商業的虚栄心とは正反對なり。則ち徒に國家の富を誇りて之を愛國的擧動なちと妄信する如き者は、所謂愛國心の賊にして斯る虚栄心は決して國家に對する義務の負債を償却するに足らざるなり。
愛國心なるものは平和の時代に於て潜伏せざるが故に虛僞の愛國者と眞正の愛國者とは之れ區別するを難きにあらず。縦し其身卑賤ならんも、苟くも此の特色にして存在せんか、自ら功名に醉ひ冨貴に傲れる者の中に於て嶄然一頭地を抽くを見ん。
國家の爲に死するは國家の爲に生くるに比して愛國の點に於て必ずしも譲るものにあらざれども、國家に對する利益に至りては同一なりと謂ふべからず。
然るに『戦時に於て死せよ』との命令中には彼の怯懦なるもの、奸譎なるもの、賣國奴も能く其惡罪を隠蔽するに適切なる避處を発見するを得べし。然り、平和の時に於て其愛國的活動を怠り、之れを戦時まで繼紹するが如きは、眞に國民的價値の絶無なるものとなりとす。
(中略)
人間の政治的生命の濫觴に関しては固より正確に知得すべからざすも、是れ必ずしも絶対に不可思議の問題にあらず。想ふに原始時代に於て人類が間斷なき個個の争闘をなしつゝあるの時、即ち氷河時代以前に既に蓊鬱たる寂寞たる森林に於て、極めて重大なる一戦闘の人類間に行はれたるを知るに難からず。彼の勇敢なる石器時代の一人類が其附近の山林を彷徨して、自己に敵對したる他の凡ての人類を殺戮し、又は征服し盡したる時、玆に初めて人間の統治権を生じ、之れと共に社會的秩序を為し平和の端緒を示すを得たりき。即ち彼の勇敢なる一人が粗末なる石斧の最後の一撃に依り、自己の周圍に死者と服從者とを見たるの時、所謂國民なるものは初めて發現したるなり、彼の一人は最初の君主なりき、而して其石斧は彼が最初の立法なれ。且つこの石斧こそ、爾後永久に此世界に於て國民を建造し若くは滅亡する所の方法を示すものなりけれ。
戰爭————勝利————國民。戰爭————破壞————滅亡。
是れ即ち國民生存の悲しき約語にして、人類社會ありて以來今日に至るまで一定不變の順序なり。六千年の昔、 一群の蠻人がイラムの山地を降り、剣を揮ってチウラニー民族たる牧羊者を打つて一丸となし、以てカルデア帝国を形成したりしより、最近十年前日本の武士が東海の一孤島より起りて、亞細亞の大陸に新帝國を刳り取るに至るまで、會て此法則の中止、若くは變化せられたることなし。
凡そ地球上に存在する國家又は國民にして戦争の生みたるものにあらさるはなし、其出産は皆戰爭てふ痛苦を經て来れるなり。而して戦争により生れたる國民は終に避く可らざる運命に從ひ防備なき國土の荒墟中に死滅し了れるなり。肉體の活力は人の生存競争に於ける勢力を示すが如く、勇武的活動力は國民の實力を形成す。理想、立法、憲法の類は固是れ一時的の閃光に過ぎずして、唯此武勇的活力も存在する期間に於てのみ發現し得るものなり。
個人に於て成人とは即ち肉體的活力の絶頂に達せるを示すが如く、國民の戦闘的成功とは其實力發展の絶頂に達したるを謂ふ。人の肉體的活力の衰亡は疾病若しくは老衰を意味し、死を以て其終末となすが如く、國民戦闘力の退步は即ち共衰亡を示す。若し斯る場合に至らば速かに國力復興の方法を講するに非ずんば、國家は茲に衰頽し終局の運命は會て幾多の國家に來りしものと必ずや一轍の亡滅に了らんのみ。
宇の破壊を想像し得るものあらんや。然も誰か其國家が繁榮の絶頂に達し、國民を擧げて偉大を自負する時に於て、已に脆弱なる殿宇の破壊を想像し得るものあらんや。
(中略)
古來各國の形勢を觀察するに、衰亡の機は發展の完成の時期に次ぎて來るを例となす。従て軍備の弛怠と、尚武心の衰亡とは、自ら園家衰運の前徹として發生するを見るなり。然らば軍備の弛怠と尚武心の減退が極度に達するの日は、必ずや其國の滅亡するの日ならざるはなし。獨り我合衆国は此例外に在るものゝ如し、即ち戦闘力の衰徴は必ずしも其れ程の國家の衰運を意味せず、寧ろ我國は現今職闘力の自然的衰退を更に人為的に速めつゝあるの奇觀を呈せり。
單に人民が軍事的の事業に冷淡なるのみならず、叉組織的努力を以て現在の軍備を破壊せんとするの行爲あり、更に軍備の潜勢力とも云ふべき尙武の氣象をすら一掃せんと企てつゝあり、試みに見よ我合衆國内に生存する無数の人民は上下を問はず、唯各人、其私利を營むに汲々たるのみ。彼等は合衆国の寄生蟲たり、即ち彼等の見る所を以てすれば、此國は彼等が自らを肥大ならしむる道具なり、富國強兵は其理想にあらず、彼等は唯國家の肥肉を啖ひて、自己幼蟲的の貪慾を充たさんとするに過ぎざるのみ。
若し夫れ愛國心を必要なりとせば、そは我共和國創立の主義、即ち純粹にして頑強なる勇氣により、自ら剣戟を揮ふて以て図家の基礎を建てたる、當時の精神の如きものこそ正に愛國心の理想なれ。我祖先は七年の獨立戰爭により、自己の血を流して以て、十三州獨立の基礎を鞏固ならしめたりき。されば斯の如くにして建設せられたる此國家を永久に維持し、其勢力を無限に發展せしめ、其理想を把持して、以て創立者の希望を完成せんことは、是れ眞個の愛國心に非らざらんや。米國人民の愛國心は正さに此理想に向ひ發揮せられざるべからず。
曩きに商業主義に就て論じたる所、又論ぜんとする所に就て、讀者の誤解を招くことなからんことを希望す。若しも工業を發達し土地に潜藏せる富源を開くを以て國家眞正の偉大に伴ふべき一要件に過きすと見做し、之を以て國家存在の目的と看做すことなくんば、是れ實業主義の正當なる解释にして、吾人の賛同する所なり。
抑も實業主義なるものは、目的を達する手段に過ぎずして目的其ものにあらざるなり。人間は食物によりて養はるゝが如く、國民は實業によりて養はるゝなり。人は食はんが爲めに生活せず其志を成就せんが爲めに前進する間、肉體を維持せんとして食物を取るなり。
工業主義と國家との關係は、工業主義は國家を建設し其理想を保存するに足る力を興ふるの食物なり。此力によりて世界列強の間に馳騁し、彼等と輸贏を争はんとするなり。若しも之に反し實業主義を以て方便に非ずして目的なりとなし却て國家を以て實業發展の方便に使用するに至らんには、亡國の機は既に此間に發生せるなり。人若し人生に於て一の希望なく目的なく、單に食せんがために生活せば吾人の嫌惡と輕蔑とを招かんのみ。
國民も亦實業を以て其目的となす時は、列國民中にありて貪慾者と見做され野卑傲慢恰かも肥滿せる豚と同一視せらるゝに至らんのみ。如斯目的なき貪慾心は實業發達の副産物にして、吾人は之を名づけて商業主義と云ふ、實業主義と商業主義との差異は、前者は人類の需用を満たさんが爲めに、個人が實業に従事するを意味するものにして後者は實業の發達を利用して、個人の貪慾心を誇足せんとする者なり。而して今や米國人は此 商業主義の擒となれり、商業主義は國民自然の向上心を抑制し、前途の發展を停止するのみならず、共和國の存立をも危ふせんとしつゝあり。
更に又一方に於て吾人は軍國主義を以て方便に非ずとは爲さず、寧ろ是れ實業主義と同一なる意味に於て國家存立の一條件なるのみ。唯二者の異なる點は下の如し、軍國主義は國家を興し之を維持する原動力なるに對し、實業主義は國家發展に必要なる富力の供給をなすに留まる。但し實業主義にして正當の軌道を脱し、所謂商業主義と轉化墮落するに至らば遂には國家終局の腐敗を招くに至らんのみ。
之を要するに商業主義は、自然的貪慾主義にして國家を蠶食し終れば、即ち自らも共に消滅して了るものなり。之に反し軍國主義は地球上に於ける凡ての國家を建造し、其發展を促し、而して人類の平和を保持するものなり。軍國主義たる、人をして其最も愛重する自己の生命をも其把持する所の軍國主義以上に愛すべきもの と爲さしめず、然るに商業主義は何等の遠慮もなく凡ての主義名譽を抛ち唯賤劣極まれる財産を獲得して之を誇らんとするものなり。
國民が非常に富み且つ傲慢となり、同時に其富を保存し、其虛傲心を支持すべき軍備を有せざる時は、眞に危険なる地位に陥るなり。國民の富及び奢侈心は、其軍備と反比例をなすものにして、方に破滅の時期に近づきつゝあるなり。
而して玆に二國ありと假定せよ、一は富國にして尙武心を缺き、他は貧國にして尙武心を有し、各々國家發展の結果遂に相接觸し相衝突するに至らん乎、蓋し戦争は避く可らざるなり、而して富國弱兵の國は必ず貧國強兵の國に破られ、長へに人類の活動界より其跡を滅するに至るべし。

出典:『日米必戦論(原名 無知の勇気)』ホーマー・リー著、望月小太郎訳

私にとって、ホーマー・リーの国家観、戦争観は、疑うべきものではありませんでした。

仲小路彰の”グローバリズム思想=地球論”に出会う前までは、、、。

日本陸軍を代表する情報将校福島安正は、

「日本人は世界の人類が全部日本人と同様に平和な人間ばかりであると思い込んでいて、外国人が日本に侵略してくるなどと考えること自体、誤りだと信じている人間ばかりである」

と警鐘を鳴らしたとされますが、まさにその通り。

ただし、”日本人と同様に平和な人間ばかり”もまた極めて重要なのです。

こちらの記事でお伝えしたとおり、

人類の歴史は戦争の歴史であるとはいえど、”競わず争わずの過去”があるのですから、”競わず争わずの未来”を描くことも可能。

ホーマー・リーには描けなかった未来を仲小路彰は描いていたのです。

そういった視点で、『日本經營計画』を読み進めて頂ければ、必ずやあなたのお役に立つものと確信します。

1、講和問題に對する日本の態度【日本經營計画】

2、日本の國連的定位【日本經營計画】

次回、

Ⅱ 政治・外交・國防
 1.國連協力の本質的方向
 2.單独國家性より國家連合性へ
 3.國土防衛の方向

を開示する予定です。

不定期更新となりますが、楽しみにお待ちくださいませ。

それでは、また。

戦略思想研究所 中森護

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