平和文化体系『地球の平和』趣旨 地球文化研究所
「地球の平和」の現實的諸問題
現實の平和の危機は、全地球にいよいよその深刻なる様相を露呈しつつあり、最も差迫つた問題として、人類の運命を脅かしつつある。
この世界の危機に對して――「平和を守れ……」のスローガンのもと、平和運動は全世界に展開され、政治的・思想的な平和維持の方策が論議されている。しかし、これらの平和運動の本質をとらえるとき、果してこれで平和を確保することが出來るであろうか?――という疑問が、果しない危惧とともに湧き上つて來るのを、いかんともすることが出來ないのである。
それは現實の平和論が、餘りにも論理的・イデオロギー的側面にのみ止まり、むしろ最も抽象的な「平和理論」と化していることに最大の問題が存すると思われるのである。問題は、人類がいかに第三次大戰を回避し、眞に平和的創造的社會形態を實現するかという問題であり、平和についての一般論よりも、生きた現實を通じてあらゆる社會的文化的側面に對する明確な體系的な構成による明確な認識を必要とするのである。
しかも、現在このような平和文化に對する體系的な構成による研究は皆無であり、今日この平和文化の體系的表現によつて、戰爭と平和との二律背反に苦しむ人類のあらゆる外面的・内面的諸問題の解決を圖ることこそ、最も要求され、希望されるものである。
この意味において、本大系は現實的に最も要望されつつある企畫であり、時期的にも平和問題があらゆる意味から焦點化しつつある今日とこそ、その最適の時期なるを確信するものである。
しかし、こゝに最大の問題となることは、たとえこれがどのような企畫であつても、日本の現實的立場は果してそれを表現することを許すであろうか?――というつきない疑問であり、日本の無力さへの果しない懷疑である。
このことは、一見たしかに至極妥当な當然の疑惑と思われるのであるが、すでに現實的に世界の危機は深刻化し、若しそのままに放置されるならば、最悪の事態にも陷没すべき絶對的岐路に立つているのであり、世界全體が二つの世界のいずれかにその旗幟を鮮明にしている状況にあつて、正に二つの世界の中間に位し、自ら永達に戰爭を放棄した日本にとつて、今日たとえ日本自身が現實的に無力であろうとも、たゞこの平和への方向だけは、自らの最大の反省の上に主張しうる唯一の問題と云うべきである。そしてこれこそ、原子爆彈の最初の洗禮をうけた日本の、世界平和に對する義務であることを確信しなければならない。
また、この平和文化への積極的表示によつて、未來に對する日本の態度――特にいまや大きな現實問題となりつつある對日講和會議に對して――を明確にすることにもなり、これによつてはじめて戰爭なき國の平和維持の問題に一つの方向を示しうることを認識すべきである。
今は徒らに自らの無力に低迷すべきときではなく、現實の深刻なる社會不安の問題、生活苦の悲劇等によつてもたらされる平和の危機に、いかに對處すべきか――という根本的問題に直面して、日本人として明確な理想と毅然たる態度を持しつつ、あらゆる困難に打ち克たなければならぬ秋である。
そしてこの平和文化への揺ぎない信念と大いなる決意を、日本人各自が明確に持つことこそ最も必要であり、この意味において本大系は、日本への疑惑を對内的にも對外的にも一掃せんとするものである。
しかもいまやアインシュタイン博士の革新的な重力新學說の發表にみる「總てを包括する場」の劃期的理論の完成は、まことに從來の相對性的舊秩序の價値の一切を轉換せしめるものとして、これにより極微な原子世界や極大な宇宙におけるあらゆる物理的現象が、單一な法則の下に統一されていることが明らかとなつたのである。
それはあたかも二つの世界の相對的對立が益々激化しつつある危機的現實の中に、相對性理論の止揚發展としての一大エポックを劃すべく投じられた、まさに「一つなる地球」への高次實在論的證明とも云うべく、この新學說がもたらす偉大な意義と成果こそ、創造的平和の榮光の途を記念するものである。
そしてかゝる巨視的世界と微視的世界の根源的統一の理論的場の解明は、今日世界のいかなる地位に立つ國々といえども、すべてその存在價値を一にすることを暗示し、そこにはもはや單に相對的力の均衡關係というが如き舊き因果的法則は自殺的戰爭意識とともに消滅し去らねばならないのである。
こゝに平和日本の意義は宇宙的生命の光の下に明白となつた。
見えざる怒濤の如く急奔する破局的危機への世界的現實に直面する日本は、いまこそ、その「數學的複雜さの故に實驗困難」な新學說の具體的證明として、「地球の平和」創造の自覺的統一の場に立つて、崇高偉大な平和的實驗をあえて試みなければならない。
それはさながら、かの原子核における二つの力を結合し、分裂せしめないメソン(中間子)とも云うべき位相と機能に課せられた大いなる史的運命への悲願である。
転載元:地球文化研究所著平和文化体系『地球の平和』趣旨