『日本経営計画』 地球文化研究所
巻頭言 高松宮宣仁
朝鮮事變の勃發を契機として、世界はきわめて大きく動きつゝある。
ことに隣邦の悲劇の運命を思うにつけ、一日も速かな平和と安定の到來を念願すること切なるものがある。
しかしながら、現代文明の趨くところ――世界にとつてきわめて重大な結末がもたらされようとしており、その絶對の要請として世界の恒久平和が何よりも切望されるとともに、それが單に願望されるにとゞまらず、さらに積極的に創造・建設すべき人類歴史の段階に進みつゝあることを認識するものである。
ことに原子力が、今後、社會的生產力として利用されようとする高度な文明の進展をみるにつけても、原子力を創造した人間力が、それにもまして平和の創造力となりうることを自覺しなければならない。
この世界の大きな展開の時に方り、日本の立場は、世界歴史の方向に対する研鑽とそれに対処すべき自らの態度を明かにすることによつて、はじめて確立され、達成されることが可能となろう。
すでに戰爭抛棄の憲法は、日本人の世界に対する義務と良心を満足させるべき唯一の方向であることを確信する。
この日本國民の意志は、現実の世界平和の脅威に対して、尚微弱であるとはいえ、もし全国土と全国民とをあげて平和に貢献せしめることが出來るならば、太平洋に浮ぶ四つの島をして、世界平和の據点として、きわめて大きな發動力たらしめることも、決して不可能ではないと考える。
これらの根本方向について、今度の「日本経営計画」は、その一試案として平和日本再建の全面的な課題に應えようとしている。
そこに示された諸部門、諸問題について、なお檢討の余地が十分あるとしても、その目標とする――平和文化日本の建設――とくに国際連合との関連を指示する点からも、今後、より深い研究が多くの人々により進められることを希望するものである。
転載元:地球文化研究所著『日本經營計画』