「平和文化大系」趣旨

平和文化体系『地球の平和』趣旨 地球文化研究所
「平和文化大系」趣旨 ――(地球の平和)――

平和文化への熱烈なる要望は、全人類の共通の意志として、いかに戰爭を防止し、新しい地球的文明を創造するか――の根本問題に對し、多くの努力が人類の運命を賭けてつゞけられている。

數千年の人類史を通じて、「不可避なる運命的現象」として或は「生命の最大悲劇」としての戰爭の問題は、第二次大戰の終末の直接的契機となつた原子爆彈の出現により、まさに――文明が戰爭を防止するか、戰爭が文明を壊滅するか――の最後的岐路に到達したのである。かつて戰爭と平和との對立は、世界史の中心的主題であり、この人類生活の深刻なる矛盾をいかに解決するかに、人類は常に苦悩し行動しつつ世界史を多彩に色どり來つたのであつた。これにより一切の世界文化が創造され破壊され、民族、國家、時代の興亡盛衰が決定され、今日迄、遂に戰爭とは人類において到底さけ得ない絶對的運命であるかのように認識されるに至つたのである。

そして、今日自然科學の驚異すべき發達による武器の研究は、遂に原子力を破壊力として使用するに至り、もしも人類が戰爭をさけえない運命として甘受するならば、戰爭の猛威は地球、人類、文明の一切を破滅せしめる最後的破局に直面せしめるのである。

しかもこの恐るべき世界の危機的現實にあつて、すでに地球史の本質的展開は、死滅か生存かの岐路にさまよう人類に對して、過去の地球前史とも云うべき戰爭の時代より、眞に人類の創造的發展としての平和の時代への方向を、原子力世紀の輝かしい曉鐘とともに告げようとしており、それは平和文化への地球的胎動として現實の多くの事象の中にも明かに感知されるのである。

しかし、この平和文化建設の實現は、現實にあつてそれを阻害する多くの諸困難――特に過去の戰爭時代に於ける幾多の陋習、因習よりの新しい平和時代への全面的轉換を必要とするのであり、この人類のすべての生活、文化領域に亙る根本的變革なくしては、それは到底成就し得ないことを知らなければならない。そして個人的にも、集團的にも、過去の戰爭の強大な惰力より超脱し、新しい平和時代へのあらゆる問題を解決する明確な指標と、平和に對する全面的研究とを必須とする。これこそ現代の最大の要望というべきである。

しかしながら、今日迄この人類最大の問題に對して、眞に綜合的にして體系的なる研究が全然存しなかつた事實は、人類が未だ平和文化に對して根本的確信を抱き得なかつた證左とも考えられ、また、全地球が完全に二つに分れて相對している現状にあつては、眞に客觀的に人類平和を考究することが甚だ困難であることを示していると思われるのである。

しかも、この新しい平和文化の建設は、現實的に憲法によつて自ら戰爭を永遠に放棄した日本に、はじめてその實現の場を見出しうるのであり、地球上に自己の生存の唯一つの方向として武裝なき平和を實行しつつある國が日本を除いては存在しないことは餘りにも明かである。戰爭の災禍を身を以つて體驗し、自らの過去の罪過の最大の償いを念願しつつある日本人こそ、その心奥より湧き出する平和への決意によつて、眞に平和文化の基盤を可能ならしめ得ることを、今こそ大いなる誇をもつて知るべきである。

われわれは、新しい平和文化を創造し得る地球的位置に立ちつつあるを自覺して、それへの綜合的な思索と研究を爲すべきであり、ことに現代人類の爲すべき平和への方向が存することを意識しなければならぬ。

われわれは、全地球、全人類の平和のため、今後、絶對に戰爭そのものを地球上より絶滅する――という人類の至上命題に對し、自らの全國土・全生命をあげて努力し、平和文化の創造的建設に邁進しなければならない。

かくて、この新しい平和文化の體系的表現として「平和文化大系」=(地球の平和)は構成され、これによつて眞の平和の方向を世に示し、現實の絶對的危機より出發して、未來の地球的平和世界への方向をあらゆる問題について解明せんとするのである。

平和文化の方向は、武力戰爭による破壊的鬪爭關係より創造的建設關係へ、戰爭そのものを質的變化せしめる地球的文化建設への方向であり、これにより、人間知性の高度なる發展による新文化が展開され、原子力世紀における地球社會とのその未來的統一の實現が期せられるのである。

今日、人類全體が文明破壊戰爭より平和文化建設への精神的・物質的飛躍をとげなければ、原子爆彈の猛威は人類文明の一切を破壊するであろう。この絶對の危機に直面して、本大系は人類の「平和文化建設」の根本的方向を示すのであり、その實現の方法を與えんとするものである。

平和文化の體系的表現は、二十世紀の半ばに立つ人類が、現代文明の絶頂に立つてその全貌を俯瞰するとともに、二十世紀後半の五十年間を如何に創造・建設すべきかという大問題として提起されるのであり、これは、現代文明の各部面に亙る精密な具體的研究による平和文化の根本的把握を必須とするのである。

もし、現代の平和研究に屡々見るように、政治、思想等の限定された小範圍にのみとゞまるならば、これは到底實現しえない問題であり、平和とは、單に一政治家、一思想家によつて實現されるものではなく、人類全體が自己の文明に對する根本的自覺と反省に立つて、新たなる創造を地球全域に表現するとき、初めて眞に實現可能たり得ることを知らなければならない。本大系の意義もまた、そこに存するのである。

かくて本大系は、人類史における戰爭の時代より眞に創造的平和の時代への、新しいコペルニクス的轉回を表現するものであり、二つに分裂した地球の現實に對して、新しいガリレオ的表白――「けれども地球は一つである」――を、現實のあらゆる領域に亙つて明示せんとするものである。

転載元:地球文化研究所著平和文化体系『地球の平和』趣旨

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