國際連合は人類の世界平和に対する熱望の象徴であり、またその具体的実現機構である。しばしば人は國連の不完全を指摘し、またその矛盾を云う。しかも國連が完全な機構を発揮することを希望し強要する。それだけに、國連にかけられた期待は大なるものがある。そして國連は、その最大の使命である平和の維持については、少くとも過去において、そこに幾多の困難が存したにもかゝわらず、よくその使命を果してきたのである。
國連は人類の平和に対する意志と努力とともに成長し発展すべきものである。その発展の過程における不完全性の故に、これに失望し不信をいだくことは、國連に対する甚だしい無理解といわねばならぬ。われわれは國連をして、より完全な世界平和機構の方向に発展させることによつてのみ、人類の平和と安定の基礎を固うしうると信ずるものであり、そこに地球の平和への唯一の現実的方向を認めるものである。
しかも、國連憲章に示された多くの課題について、未だ充分な機能を発揮していなかつた國連が、サンフランシスコ会議以來、満五ヶ年年をへて、今日朝鮮における最大の試煉を経過しつゝ、その本來の機能を発揮しうる段階に進みつゝあることをわれわれははつきりと認識しなければならない。
朝鮮事変を契機とする國連軍の出現は、無力さを嘲笑され、不完全性を攻撃されていた國連として、名実ともに世界平和の國際的調整機關にふさわしい権威と実力を確保せしめつゝある。しかし、その過渡的な形態にある現実は、しばしば國連軍の実体に対して、あるいはアメリカの軍事行動の國際的合理化の道具に過ぎないと考えたり、その実力に対する疑念によつて國連軍そのものの意義も見失い、かえつてそれを度外視するというような状況さえ示した。
「國連軍とは何か?」――この問いにはつきりと答えるためには、今日の現実は余りにも錯綜して、その本質を曇らせているかのようです。とくに二つの世界なる概念は、しばしばわれわれを困惑させるものである。
しかし、國連軍は、その國連旗に象徴される地球の軍隊であるという明確な自覚に立つとき、しばしば世界なる概念によつて不明瞭にされたその本質が、はつきりと認識されうるのではなかろうか?
これによつて、現在やゝともすると混乱したり、誤解されたりする國連と各國との関連も、各國と地球との関連において最も直接的にとらえることが可能ではなかろうか?
國連とは地球の平和を守る國際的機能であり、國連軍とは、地球という場所を守る――地球の安全保障――地球の平和実現のための軍事力でなければならない。かくて、われわれは、二つの世界の対立という現実が見失わせた國連の本質を、現代世界の必然的方向のうちに発見せざるをえないであろう。
世界という概念の中には、一つの世界も、二つの世界も、その他無限の世界が考えられる。しかし地球とはそれらをことごとく包括し、その母胎となる最も具体的な存在である。二つの世界の対立もまた、地球の上に存在するものであり、地球的には同一の基盤に立ち同一の内的連関を有するのである。
この地球的表象としての國連を自覚するとき、われわれは現実的に地球をもつているものとしての國際勢力の方向を、國連旗の示す象徴的意味の中に見出すことが出來るであろう。
近代科学の急速な進歩と発達によつて、次第にせばめられ、短縮された地球空間の時間は、もはや、民族を基盤とし限られた小地域で限定された近代國家そのものを、その限界にまで到達させ、一國が単独ではその成立はおろか生存さえも許されない、より統一的な地球世界への方向を必至としている。
この廿世紀の世界史的方向が必然にもたらしたものは、この単独では成立しえない各國を相互に結び合わせる世界組織、世界機関の出現であり、第一次大戦より第二次大戦を通じて、國際連盟より國際連合への発展が実存されたのである。
この國家をこえた世界的機能は、各國として、被支配國となるか、あるいは支配國とならざるをえない近代國家の究極の矛盾を、敗戦者の劣等感も勝者の徒らな優越感をも否定する、新しい世界構成の中に解消したのである。全地球上に存在する五十余ヶ國は國連のもとに、殆ど平等にして公正な権利を保有するとともに、國連に参加することは、世界平和と安定への大いなる貢献とされるのである。たとえば、日本が一國の植民地または保護國、あるいは軍事基地とされるという事態が現実化したとするならば、日本の國家的独立を危くするものとして、当然大多数の國民の反対を受けるとともに、相手國も、自ら侵略政策と非難されることを警戒して、その措置に迷わざるをえないのであるが――これは六月廿五日以前のわれわれの最大の問題であつた――國連の下に、國連によつて保障されるということに対しては、むしろ最も歓迎こそされるが、非難されるべきなんらの理由も見出されないのである。
たゞ、現在、國際連合の最大の問題とされるところは、それが世界平和の維持機関で、世界平和の創造機関ではないという限界性をいかに超えるかという問題である。
二つの世界の平和が、単に創造性のない現状維持によつては、その平和を保つことすら困難であり、平和の維持は絶えざる平和的創造の機能の上に実現されなければならないという、「地球の平和」の根本的要請を現実化すべく、國連がその機能を充実・発展させることが、國連に課せられた最大の課題である。國連の有する世界平和機構・組織・ルート・イデオロギーにいかに創造的エネルギーを附與するかゞ、「二つの世界」の対立によつて絶えず分裂の危機に直面している國連への緊急なる対策でなければならない。
國連をして、その現実に有する政治力を、さらに実質的な経済力・文化力・軍事力の充実の上に発展させ、國連の実体化を図ることが、現実の不可避の要請となつたのである。しかし、われわれはその契機として、朝鮮事変が國連軍の創設という最も困難な問題を一挙に解決し、その前途に多くの問題があるにせよ、着々と國連強化を行いつゝあり、ソ連もまた、かえつてアンチ・テーゼとしての役割を果しつゝそれに寄與するという状態をつゞけている現状からも、明らかに國際勢力がそれを國連強化の重要な契機としていることを推測することが出來るのである。
われわれは、二つの世界の明確な勢力圏の設定と、その両者の文明創造的エネルギーを方向ずけるべき、実質的な政治的・経済的・軍事的強化とが、同時的に、並行的に行われることによつて、國連がその限界をこえての平和創造的機能を発揮することが、可能であると信ずるものである。
それには、現に創設されつゝある國連軍事力をさらに強化・充実させることが第一であり、またその物質的背景として、東西二つの世界の貿易連絡機關としての経済力の確保――現にアマゾン流域につゞけられているユネスコの開発計画にみる新しい地球建設的方向の発展、第四回國連総会において満場一致をもつて成立した國連未開発地域援助計画の積極的実現等による、実力の獲得が第一でなければならない。
そしてこの國連による二つの世界圏設定への方向は、必然に、國連が二つの世界の相互的武力侵出を國連軍によつて阻止するための軍事拠点を、その中間地域に、二つの世界をへだてる和戦両用の壁として必要とするに至ることが推測されるのであり、すでに日本は事実的にその役割を、好むと好まざるとにかゝわらず附與されつゝある。
これはヨーロッパにおいては恐らくドイツに確保されるべきものであり、この日独の防壁を國連軍の拠点として確保することによつて、世界の平和と安全に力強い保障を與えることが出來ると思われるのである。そしてこれこそ、第二次大戦の直接的当事國である日独をして、その敗北が世界連合軍によつてもたらされたものであり、その無條件降伏が國際連合に対する新しい世界平和への貢獻に全力をもつて寄與させることを可能ならしめる唯一の方向であることを銘記させ、新しい世界平和への貢獻に全力をもつて寄與させることを可能ならしめる唯一の方向であることを知る。
われわれは、最も謙虚にして卒直な心をもつて、自らの過去への深い反省をなすとともに、自らの前に開かれつゝあるこの新しい方向の眞の意義を自覚し、一切の過去への郷愁・欲求・願望を放棄して、ひたすらにその未來への道に邁進すべきである。