ロサンゼルスの罪と罰

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こんばんは。
戦略思想研究所 中森です。

ご存知のとおり、
ロサンゼルス山火事の被害拡大が
とどまることを知りません。

被災された皆様及びご家族の皆様には、
心からお見舞い申し上げます。

米国第2の人口を擁する大都市ロサンゼルスは、
本来、人が定住するには過酷な気候であったと
されています。

そんなロサンゼルスの人々が、
定期的に襲う旱魃や乾燥を克服することができた理由は、
「水の強奪」によるものとされています。

ここで、
ローレンス・C・スミス著『川と人類の文明史』より
引用して「水の強奪」の経緯を簡潔に説明します。

(以下、引用)
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1世紀以上前のことだが、
アイルランド生まれの土木技師で
ロサンゼルス市水道局(LADWP)の初代局長を
務めたウィリアム・マルホランドが、

ある遠くの川の土地と水利権を密かに買い上げ、
南向きにロサンゼルスまで流す計画を立てた。

彼が目をつけたのは雪解け水をたたえたオーエンズ川だ。

ロサンゼルスから北へ300キロメートル以上離れた、
シエラネバダ山脈とデスバレーに挟まれた楽園のような
のどかな牧草地を流れる川である。

マルホランドは秘密裏に手を回して、
シエラ山脈の東側から流れ落ちる雪解け水の大部分が
オーエンズ川に流れ込むようにした。

この計画に対する流域住民の怒りは凄まじく、
反乱や爆破事件が起きている。

これに想を得てつくられたのが、
ジャック・ニコルソンとフェイ・ダナウェイが主演した、
ロマン・ポランスキー監督による1974年の名作映画
『チャイナタウン』である。

また、この騒動によって、
ロサンゼルスには、発展のためなら手段を選ばない
容赦のない街というイメージがついた。

1913年、水の強奪は完了し、
マルホランドはロサンゼルス上水路の開通式典を
とり仕切った。

これは、
オーエンズ川からサンフェルナンド・バレーまで
水を移動させるための計375キロメートルの運河と
パイプラインであり、
当時は世界最長の送水路だった。

「さあ、こちらです。使いましょう」。
マルホランドがそう叫んだのは有名な話だ。

人々はその言葉に従い、
これが新たな人口増加のきっかけとなって、
今ではロサンゼルスはアメリカで2番目に
人口の多い都市へと成長している。
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(以上、引用)

ここから補足です。

1913年のロサンゼルス上水路開通を皮切りに、
はるかかなたの川の流れを変えさせて
南カルフォルニアまで送り込むための開発が始まります。

結果、南北カルフォルニアの住民は分断され、
現在に至るまで北部の人々は南部の人々に対して
根深い嫌悪感を抱いているとされています。

南部の根なし草のようなロサンゼルスの人々が
北部のワイナリーや素敵なサンフランシスコの街を
楽しく旅するかたわらで、

それを迎える北部の人々は、
「ロサンゼルスなんぞに住むやつの気が知れない」
と眉をひそめているのだそうです、、、

さて、気づけば、
ロサンゼルスに対して否定的な内容ばかりに
なってしまいましたが、

今回の山火事が、
ロサンゼルス住民の自業自得であるというような
話をしたいわけではありません。

さらには、
マルホランドを悪人にしたてよう
ということでもありません。

むしろ、ロサンゼルスの人々にとって、
マルホランドは救世主のような存在でしょう。

ただし、
マルホランドは大自然の営みを身に帯びた人では
なかったと考えられます。

古代からずっと続いていた大自然のサイクルを
変えるのであれば、よほどの覚悟が必要です。

「大自然の罰」を受ける覚悟です。

やむを得ず変えてしまったのであれば、
「大自然の罰」を低減する知恵を絞り続け
なければなりません。

大自然を不自然に変更したのであれば、
どこかに大自然と接合する道筋をつくっておくのです。

大自然の営みを身に帯びるとは、
不自然の中にあっても常に大自然と接合することです。

定期的に旱魃や乾燥に襲われるロサンゼルスに
無理やり水道を引いて定住を選択した住民は、
予想される山火事対策を怠ってはなりません。

放火による大惨事も予想されるわけですから、
どんな陰謀論も免罪符にはならないでしょう。

されど、
「ふるさと」たる大自然と訣別した根なし草には、
壊滅的飽和以外解決策を持ち得ない宿痾がある故、
「大自然の罰」を素直に受け入れることもまた、
ひとつの選択なのかもしれません。

日本の大都市もまた然り、、、

ここで、もうひとつ、
ローレンス・C・スミス著『川と人類の文明史』より
「大自然の罰」たるエピソードをご紹介します。

(以下、引用)
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サウスフォーク・クラブという、
裕福な上流階級の人々が釣りを楽しむ施設が
犯した重大な過失により、

(サウスフォーク)ダムは決壊し、
下流域のペンシルバニア州ジョンズタウンという
発展しつつあった都市が壊滅した。

ところがクラブは罪を免れ、人々はこれに反発。
それがきっかけとなって、
厳格責任という法原理が全国的に導入されるという、
アメリカ法学上の大転換が起きた。

今日でも1889年のジョンズタウンの洪水は
アメリカ史上最大の被害を出した災害のひとつに
数えられており、

厳格責任に基づく訴訟が全国各地で起こされる
ようになっている。
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(以上、引用)

ここより補足です。

サウスフォーク・クラブとは、
ピッツバーグで指折りの富豪家族の遊び場兼保養地。

クラブの会員には、
アンドリュー・カーネギーや
ヘンリー・クレイ・フリック、
アンドリュー・メロンといった
政財界の大物が名を連ねていました。

1880年、
ある技術者がクラブに警告を発しました。

ダムの修繕は不十分で、
下流域のジョンズタウンの町が存亡の危機に
さらされていると。

しかしながら、
大富豪たちはこの技術者の警告を無視し、
「大自然の罰」を低減する知恵を絞らなかったのです。

彼らの経済力と徳操をもってすれば、
いくらでも対策を講じることはできましたが、
どうしてもできない宿痾に悩まされていたのでしょう。

1889年、ジョンズタウンは壊滅。

大洪水の原因が明るみに出ても、
クラブは過失を認めず、
復興のためのわずかな寄付しかしませんでした。

クラブに対して何度も訴訟が起こされるも、
クラブも会員も責任に問われることはありませんでした。

厳格責任という法原理が生まれた発端でもあります。

このように、
「大自然の罰」は人間社会における因果応報の外にあるため、

私たちは常に、
どこかに大自然と接合する道筋をつくっておく必要があります。

ジョンズタウン壊滅の例を稽古するならば、

サウスフォーク・ダムと
サウスフォーク・クラブの
「在るがまま」を受け入れつつも、

未来予想されるであろう危機、
即ち「成るがまま」を見透かすことで、
飽和的壊滅ではなく不飽和的生存を選択するのです。

不飽和状態とは、
どこかで大自然と接合している状態でもあります。

今日在る自分の肉体と精神は明日も在るか、、、?
それとも消えているのか、、、?
どのくらい残り、どのくらい消えているのか、、、?

その答えを知っているのは、
確実に明日も存在する大自然のみです。

前回に続き長文となってしまいましたが、
ロサンゼルス山火事をうけて私たちがなすべきことは、

自らの「未来を養い、教え、禁じる」潜在力を
自問自答することであると考えます。

マルホランドはロサンゼルスの未来を養いました。
しかし、「教え、禁じる」ことを怠ったのです。

いくら未来を養ったところで、
サウスフォーク・ダムのように
飽和してしまえば壊滅します。

マルホランドが、以後の州水計画に対して、
「教え、禁じる」型と振る舞いを明確に示していれば、
必ずや後に続く人財が現れ、

ロサンゼルスに対する「大自然の罰」を
最小限に抑えることができたでしょう。

それだけの覚悟と準備をもって初めて、
古代からずっと続いていた大自然のサイクルを
変えることができるのだと思います。

その潜在力を持つ具体的な民族は、
縄文人とその義兄弟ツラン。
クリミア発祥のスキタイ、
ヒンドゥークシュのマギも同じく。

そして、もっと具体的には、
風猷縄学稽古に臨むあなたがその人です。

【第四期】第一回参加者募集は、
明日から開始します。

テーマは、
『北朝鮮の対日歴史観(仮)』

北朝鮮の「在るがまま」を知り、
近未来、北朝鮮を取り巻く情勢が如何に「成る」のか。

北朝鮮の「古を稽える」ことができる最高の機会となる
ことをお約束します。

風猷縄学稽古編【第四期】参加はこちらから。
https://st-inst.co.jp/blog/custom/fuuyuujougakukeiko4th/

それでは、また。

戦略思想研究所 中森護

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