【必読】高松宮グループの安保構想

こんにちは。
戦略思想研究所 中森です。

昨今の日本をめぐる安全保障政策に鑑み、
今こそ熟読したい安保構想を共有します。

それは、高松宮グループの安保構想

早速ですが、
春日井邦夫著『情報と謀略 下巻』より
誤字脱落を修正のうえ転載します。

一九五二(昭和二七)年二月二八日、
日米安保条約を履行するための行政協定締結に際し、
高松宮殿下の川添紫郎秘書が
アメリカ大使館のラスク大統領特使に要望した文書は、
アメリカ国立公文書館に秘蔵されていたが、
三五年たった一九八七(昭和六二)年一二月に
公開されることになった。

すでに川添秘書は一九七〇(昭和四五)年一月に死去。
起草者の仲小路彰も一九八四(昭和五九)年九月に没後
三回忌が過ぎていた。
また主宰された高松宮殿下が薨去されてから
一〇ヶ月後のことであった。

朝日新聞社はこの公開資料から、

報告書
「日米安保条約及び行政協定に関する日本の要望」
(英文二二頁)。
「シロー・カワゾエ」の署名入り英文書簡、
関連アリソン・ラスク往復書簡

を訳出して、同一二月二六日付朝刊に掲載。

「故高松宮グループ/三五年前独自の安保構想/
米に提出の報告書入手/改憲・徴兵制案も」
と大見出し(一八行×五段通し)で報道。

秦郁彦拓殖大教授が解説していた
「三五年前、独自の安保構想」は
全文二二四〇字にのぼる長文の記事に
まとめられている。

現在(二〇一〇年)から見ても遜色ない
六〇年前の日本人の安保構想と防衛力を論じた
貴重な歴史的資料である。

以下「朝日」掲載の原文のまま再録して、
参考に供したい。

(以下、「朝日」掲載原文)

【日米安保条約及び行政協定に関する日本の要望(要旨)】

〈日本の防衛体制確立〉

一、
基本的課題原則的には日本の防衛力は、
国連加盟後は太平洋国連軍の形態を取るべきだとの
見方が一般的である。
しかしこうした計画は将来的なものであり、
現在の情勢のもとでは以下に掲げる措置を取りながら、
防衛力を漸増させて行くことを提案したい。

①警察予備隊、海上警備隊を補強し
自衛軍(ガード・フォース)的性格を持たせる。
②同時に賠償問題を解決する。
また憲法を改正し、
国際的な軍事バランスの変化に応じて、
自衛軍を国防軍に昇格させる。
③賠償などを通じ、
アジア太平洋地域での日本の建設的役割を確立する。
④日米安保条約、米・豪・ニュージーランド間の安全保障条約、
米比相互防衛条約を発展させ、太平洋安全保障機構を創設し、
日本も主権国家として参加する。

もうひとつの案は、
以下の措置によって日本の防衛力の性格を
国家正規軍に変える方法である。

①警察予備隊、海上警備隊を正規軍に昇格させる。
②憲法九条を改定する。
③軍事生産能力を増強する。
④徴兵制を導入する。
⑤以上の計画を達成するため、
アメリカに財政支援を要請する。

現在の国際情勢の急激な変化を考えると、
警察予備隊などを漸増させて国防軍を組織する
十分な時間は与えられていない。

そこで、侵略行為に対処できる唯一の道は、
前期の太平洋国連軍に現在の日本の防衛力を
統合させることである。

共産側の侵略というような事態に十分対応できるだけの
防衛力は太平洋軍の組織化によってのみ可能である。

二、
現在の世界勢力、ソ連の脅威は
極東と中東の間にある諸国を不安定にさせており、
東西からソ連の封じ込めを強力に進める必要がある。
日米安保条約も北大西洋条約機構(NATO)的な枠組みに
つながるのが望ましく、
日本の潜在的な戦力を直ちに高める必要がある。

また朝鮮半島では休戦交渉が難航しており、
極東でさらに深刻な危機が発生するのも確実と言える。

こうした新たな戦争に備えるためにも、
日米安保は太平洋地域の安全保障を充足する役割を担っている。

〈防衛力確立への道〉

一、
日本の防衛は太平洋の共同防衛の枠組みの中で考えるべきであり、
国軍だけでは一国の防衛すらできないことを日本国民は認識している。

二、
日本の防衛力は、太平洋国連軍として性格づけられるべきであり、
そうすることによって日米安保および国連憲章の目的が達成可能
となる。

三、
太平洋軍の核として日米安保条約に基づく日米合同委員会を設け、
以下の機能を持たせる。

①アジア太平洋地域にNATO並みの防衛体制を敷く。
②共同防衛計画を研究、策定する。
③賠償の支払いを通じ、アジア太平洋地域の振興に努める。
④アジア太平洋開発大学を設立する。

四、
太平洋国連軍は、日米安保条約、行政協定を基礎とすることが望ましい。
だがその一方で日本の防衛力増強は、国内治安、秩序の範囲で進めるべきである。

〈行政協定〉

一、
新たな防衛力創設は、
かつての軍国主義の再生でないことを多くの国民が理解している。
若い世代も「太平洋の平和」へ向けた防衛努力であれば結束するだろう。

二、
日本は現在の経済力では、
独自の戦力を保持することは非常に困難である。
本当に有効な防衛力は、
経済力に応じたものでなければならない。
それを超える防衛力増強は社会不安を引き起こすことになろう。

三、
戦時賠償問題を解決するカギは日本経済と国際経済の融合にある。
賠償金はマーシャル・プランのような性格を持たせ、
アジア太平洋地域の生活水準向上や文化活動のために
役立てられるようにしたい。

〈対共産圏政策〉

一、
スターリン首相による日ソ貿易協定締結などへの動きは、
ソ連のいわゆる「平和攻勢」を反映したものである。
その意味を十分察知したうえでソ連との関係を再開し、
鉄のカーテンの内側をのぞいて見るのが、
日本にとっての自由世界の戦略であろう。

二、
「赤い中国」とは貿易関係の樹立が望ましく、
そうした関係を利用して逆に相手の態度を変えられるかもしれない。
中国の権益はソ連の権益と常に一致しているわけではない。
両国間には基本的矛盾が存在し、中国の歴史、国民性、
社会制度などの独自性が将来の両国関係を決定づけよう。
日本が台湾の国民政府と平和条約を結ぶのは当然としても、
当面は「二つの中国」政策を続けてゆくのが現実的である。

(以上、「朝日」掲載原文)

高松宮グループのレポート
「日米安保条約及び行政協定に関する日本の要望」
についての原本は失われて見ることができない。
当時からでも三五年前。
二三年後の今(二〇一〇年)からいえば五八年前という
遠いはるかな昔の新聞記事であり、
当事者がほとんど死没しているためでもあろう。

ただし、
この報告書の公開に際して明らかにされたアメリカ側の往復書簡。
一九五二(昭和二七)年三月一二日付のラスク特使からアリソン
極東担当国務次官補(後に駐日大使)に宛てた書信と、
同年六月四日付のアリソン国務次官補からラスク氏への返書は、
アメリカ側の直後の対応を示す貴重な反響であった。

ラスク特使はこの時国務省を離れ
ロックフェラー財団理事長の要職にあったが、

手紙には
「高松宮の見解を明らかに盛り込んだカワゾエ氏からの
メモランダムを同封する。高松宮の影響力と重要性を考え、
詳細な検討のためあなたに転送することにした」

とある。

アリソン国務次官補の返書には
「われわれとしてもこの見解を国務省の政策形成に活用したい。
こうした見解が日本でどれくらい広く支持されているか見極めて
いるところだ」

と書かれていた。

また「朝日」スクープ記事では、
光輪閣のメンバーだった長谷川周重・住友化学工業取締相談役を
取材して「殿下も承諾のはず」という談話も掲載し、
「昭和二五年訪米することになった時、
宮様からロックフェラー氏宛のレポートを手渡されたことがある」
と、高松宮グループの書簡による国際連絡が、
すでに何回か行われていたことを裏付けている。

ただし「朝日」スクープが発信した肝心の
「高松宮殿下の文化グループ」
「光輪閣と密接な関係にあった政策集団地球文化研究所」
光輪閣の世話役で高松宮の秘書を務めていた川添紫郎(後に浩史と改名)
「地球文化研究所の代表的人物としての文明思想家・仲小路彰」
「終戦時の海軍軍令部作戦部長だった富岡定俊」
という貴重なキーワードについては、
その後、追跡されることなく、
歴史の彼方に流れ去ったようである。

最も、もともと深く静かに、
秘かに行われた日米双方にとって秘密の情報連絡であり、
三五年たって朝日新聞が独占スクープしても、
さっぱり反響がなかったこと自体、
情報秘匿からいえば大きな成果であり、
良かったのではないですか、と、存命ならば、
仲小路彰が大いに笑ったであろう話である。

仲小路は「シロー・カワゾエ」がラスク大統領特使に
レポートを届けた一九五二(昭和二七)年二月二八日
から二一ヶ月後の一九五三(昭和二八)年一一月一五日
発行の『地球との対話』「太平洋同盟と太平洋計画」の
「付」として「地球文化研究所対米交渉の記録と報告」
を掲載、日米安保の次に為すべき太平洋同盟の構想と計画を
語っていた。

著者が述べているとおり、
現在から見ても遜色ない貴重な歴史的資料です。

日本の安全保障の未来のため、
必ず熟読すべき資料であると確信し共有します。

蛇足ではありますが、
私の古巣である護衛艦隊(現・水上艦隊)のロゴの背景地図は、
改定すべきであると秘かに思っています。

また、
春日井邦夫著『情報と謀略』(上・下)につきましても、
ぜひお手に取ってお読み頂くことをお勧めいたします。

それでは、また。

戦略思想研究所 中森護

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